水と暮らしのお役立ち情報

なぜ日本の水道水は飲めるのか?その安全性の秘密とは

2024.05.27

  • SHARE
  • エックス
  • フェイスブック

日本は世界でも有数の水道水先進国として知られており、その安全性の高さは世界からも評価されています。
しかし、なぜ日本の水道水は安心して飲むことができるのでしょうか?

この記事では、日本の水道水の安全性の歴史、水質基準とその重要性、処理方法、検査と管理体制、世界との比較、課題と展望について詳しく解説します。

日本の水道水の安全性の歴史

そもそも日本で水道はいつから始まったのでしょうか。
そのきっかけと歴史から解説します。

明治時代から現代までの水道の進化

日本の水道水の歴史は、1590年(天正18年)に徳川家康の命を受けた大久保藤五郎によって開かれた、小石川上水より始まります。
それまでは川の水や井戸の水を汲んで使用していたのですが、人口急増と水質の問題で現在の水道の原型が作られました。
その後発展した近代水道が始まるのは、1887年(明治20年)10月17日に通水した横浜市の水道になります。
この水道は江戸末期から明治初期にかけて外国との貿易が活発化した反面、コレラ・チフスなどの伝染病が全国的に大流行したことに対処して作られました。
その後、全国各地で水道施設が整備され、1960年代には全国のほぼすべての市町村に水道が普及しました。

水道普及と同時に、水質基準の制定や浄水技術の進歩により、水道水の安全性は飛躍的に向上しました。

水道法の制定とその目的

1957年(昭和32年)に制定された水道法は、水道事業の運営に関する基本的なルールを定めています。
水道法の目的は、国民に安全で良質な水を豊富低廉(大量に安く)に供給することです。

水道法では、水質基準の遵守、定期的な水質検査の実施、水道施設の適切な管理などが義務付けられています。

水道法の水質基準とその評価

それでは水道法で、どのような基準で水質を管理しているのでしょうか。
また、その水質の世界的評価はどうなっているのでしょうか。

水道水の水質基準項目

水道法では、水道水の水質に関する51項目の基準値が定められています。
これらの項目には、以下のようなものが含まれます。

  • 鉛、砒素、カドミウムなどの重金属
  • 大腸菌、一般細菌などの微生物
  • トリハロメタン、フッ素などの無機物質
  • ジオキサン、ベンゼンなどの有機物質

これらの項目は、人体への影響を考慮して設定しており、定期的に検査されています。

水質基準の厳格さとその評価

日本の水質基準は、世界保健機関(WHO)のガイドラインよりも厳格に設定されています。
そのため、日本の水道水の安全性は世界トップレベルと言えます。

実際、国際消費者機構(Consumers International)が2020年に発表した調査によると、日本の水道水は世界132カ国・地域のうち、水質が最も良好な上位10カ国に入っています。

日本の水道水の処理方法

安全で質の高い水道水が届けられるために、浄水場で行われている処理は何があるのでしょうか。
また、水道水でよく耳にする塩素はどんな働きをしているのでしょうか。

浄水場での処理過程

日本の水道水は、浄水場にて汚れを取り除いた後に家庭に供給されます。
その際に沈殿・ろ過・消毒という作業が行われています。

  • 取水: 河川や地下水などの水源から水を取水します。
  • 浄水: 取水した水は、浄水場で以下の処理を受けます。

    ①沈殿: 水に含まれる砂や泥などの浮遊物を沈殿させます。
    ②ろ過: 沈殿した物質を取り除いた水を、砂や活性炭などの濾過層でろ過します。
    ③消毒: 塩素やオゾンなどを用いて、病原菌を殺菌します。
  • 送水: 浄水された水は、ポンプで送水管に送られ、家庭に供給されます。

塩素消毒の役割とその効果

塩素消毒は、水道水を安全に供給するために欠かせません。
塩素には、以下の効果があります。

  • 病原菌の殺菌:大腸菌群やノロウイルスなどの病原菌を殺菌します。
  • 藻類やカビの抑制:水中に発生する藻類やカビの繁殖を抑制します。
  • 悪臭の防止:水中の腐敗物質による悪臭を防止します。

塩素は、微量であれば人体に影響はありません。
しかし、カルキ臭と呼ばれる特有の臭いを発生させることがあります。

水道水の検査と管理体制

水道局は、定期的に水質検査を行い、水道水の安全性を確認しています。
水質検査は、取水、浄水、送水それぞれの段階で行われ、検査項目の51項目全てを検査しています。

検査結果が基準値を超えた場合は、すぐに原因を調査し、適切な措置が取られます。

水道局の監視システム

水道局は、24時間365日、水道水の質を監視するシステムを構築しています。
このシステムは、センサーやカメラなどを用いて、水質や水圧などをリアルタイムで監視し、異常があればすぐに検知することができます。

水道水の課題と今後の展望

近年、水質汚染や気候変動による豪雨や台風などの影響により、水道水の質が低下する懸念が高まっています。
こうした状況下で、水道水の質を維持することはますます重要になっています。

そこで、現在以下のような技術革新を通してより安全で安心できる水道水を提供するための取り組みが行われています。

水質向上のための技術革新

  1. 膜処理技術の進化:微小な脅威に対抗

    従来の浄水処理では除去が難しかった微小な物質や有害物質が、膜の性能向上や新しい膜材料の開発などによってしっかりと取り除かれています。

  2. センサー技術でリアルタイム監視:異常を素早く察知

    水質をリアルタイムで監視するセンサー技術の導入により、水質の変化をいち早く察知できるようになり、異常が発生した場合は、迅速な対応が可能となり、安全な水道水の供給の維持が図られています。

  3. AI技術で賢く分析・予測:効率的な浄水処理を実現

    AI技術を活用することで、膨大な水質データを分析し、将来の水質変化を予測することができます。
    この予測に基づいて、最適な浄水処理方法を導き出すことで、より効率的な水処理が目指されています。

新たな汚染物質への対応策

近年、PFOSやPFOAなどの新たな汚染物質が検出されています。
こうした未知の脅威にも対応できるよう以下の取り組みも行われています。

  1. 水質検査項目の拡充:さらに細かい検査を

    水質検査項目に新たな汚染物質を追加することで、より詳細な水質検査を能にし、知の物質も見逃さず、安全性の追求が行われています。

  2. 新たな浄水処理技術の開発:未知の敵にも打ち勝つ

    新たな汚染物質を除去するための浄水処理技術の開発にも力を入れ、大学や研究機関と連携し、最先端の技術を取り入れながら、未知の脅威にも打ち勝つ技術開発が進められています。

  3. 情報公開で透明性を高め、不安を解消

    水質検査結果や新たな汚染物質に関する情報を積極的に公開されており、市民の皆様に透明性の高い情報提供が行われています。

まとめ

日本の水道水の安全性は、世界中から広く認められています。
厳格な水質基準、高度な浄水技術、定期的な検査と管理によって、良質な水が家庭に届けられているのです。

近年、環境変化による水質悪化や新たな汚染物質の検出が懸念されていますが、技術革新への取り組みや新たな汚染物質への対応が積極的に進められているため、安心して水道水を飲むことができます。

宮崎 寿治

執筆監修

宮崎 寿治

ResetTimeのほか、かぞく想いの天然水、純天然アルカリ保存水の担当として営業活動を執り行うかたわら、日々知識をアップデートすべく勉強中。独自の切り口から様々な情報を取り入れ、そこで得た知識を基に記事の監修を行う。得意分野は保存水。

一覧へ戻る