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水道水PFAS汚染の全国状況と安全対策
2025.07.30

長年さまざまな製品に使われてきたPFAS(有機フッ素化合物)は、その便利さの裏で、自然界や人体から分解されにくいという重大な問題を抱えています。
国内外の研究により、健康への影響が少しずつ明らかになり、水道水や地下水からの検出例も増加しています。
本記事では、「PFASとは何か」から始め、健康リスクや全国各地の検出状況までを解説します。
安心して水を飲み続けるために、PFASの正しい知識と、現実的な備えを一緒に確認していきましょう。
目次
PFASとは?「永遠の化学物質」の基本知識

PFASは、私たちの生活の中で知らず知らずのうちに使われてきた化学物質でありながら、近年になってその有害性と環境への影響が世界的に問題視されています。
以下では、PFASがどのような物質で、なぜ「永遠の化学物質」と呼ばれるのかを解説します。
PFASの基本的な性質や背景を知ることで、なぜ飲料水や環境中からの曝露を防ぐ必要があるのかが理解しやすくなるでしょう。
PFASについては、以下の記事も参考になります。
PFAS基準値が変わる?!その背景と私たちの健康への影響
PFASの特徴
PFAS(ピーファス)は「Perfluoroalkyl and Polyfluoroalkyl substances」の略称で、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物と呼ばれる有機フッ素化合物の総称です。
PFASは人工的に作られた化学物質で、1940年頃から様々な工業製品や生活用品に広く使用されてきました。
その特徴的な性質により、私たちの身の回りで幅広く活用されています。
永遠の化学物質と呼ばれる理由
PFASが永遠の化学物質と呼ばれる理由は、炭素とフッ素の強固な分子結合により自然環境で分解されず、長期間残留し続けるためです。
PFOS・PFOAをはじめとするPFAS物質は難分解性、高蓄積性、長距離移動性という特性を持ち、北極圏を含む世界各地で検出されています。
体内に入ったPFASも徐々に排出されるものの、血中濃度が半分になる半減期は3~5年と長く、95%が排出されるのに40年もかかると言われています。
この分解されない性質により、一度放出されると環境中に永続的に残るため、アメリカでは「永遠の化学物質」と名付けられました。
現在も世界規模で残留が続いており、環境汚染の深刻な問題となっています。
※参考:
全国でPFASの検出相次ぎ、政府が対応策 「水の安全確保」へ実態把握と対策急務 | Science Portal - 科学技術の最新情報サイト「サイエンスポータル」
PFOS、PFOA に関するQ&A集
PFOS・PFOAへの対処法 | 瀬戸のまち統合治療院
PFASの健康への影響

PFASは、体内に長期間残留することでさまざまな健康被害を引き起こす可能性があると指摘されています。
以下では、PFASがどのように健康へ影響するのか、特に注意が必要な人はどのような人なのかを解説します。
健康リスク
血中濃度の上昇により発がんリスクや免疫機能低下など複数の健康被害が報告されています。
国際がん研究機関(IARC)はPFOAを「ヒトに対して発がん性がある(グループ1)」、PFOSを「発がん性の可能性がある(グループ2B)」に分類し、特に腎臓がんと精巣がんのリスク上昇が指摘されています。
その他の健康影響として、
- コレステロール値上昇による脂質異常
- 肝酵素の変化
- 甲状腺機能への影響
- 免疫力低下によるワクチン効果の減少
が確認されています。
妊娠・出産への影響では、妊婦の高血圧リスク上昇、新生児の出生体重減少も報告されており、胎児期からの影響が懸念されます。
ただし健康被害をもたらす具体的な摂取量については確定的な知見がなく、現在も国際的な研究が継続されています。
※参考:PFAS(有機フッ素化合物)とは?|健康への影響と法的リスク | 中小企業の未来をサポート MSコンパス ❘ 三井住友海上
特に注意すべき人
PFASによる健康リスクは、特に以下のような方は注意してください。
- 妊婦・授乳婦・乳幼児
- 免疫機能低下者
- 腎臓・肝臓疾患患者
妊婦の場合、PFASは胎盤を通過して胎児に移行し、出生時低体重や発達への影響が懸念されます。
授乳中の母親では母乳を通じて乳児にPFASが移行するため、乳幼児期からの健康リスクがあります。
免疫機能が低下している人では、PFASによる免疫系への悪影響により感染症にかかりやすくなる可能性があります。
腎臓や肝臓に既存疾患がある人は、これらの臓器にPFASが蓄積しやすく、臓器機能の更なる悪化や代謝機能への影響が起こりやすくなります。
PFASに関する調査報告

PFASによる水質汚染は、全国規模での調査と監視体制が整いつつあり、各自治体や報道機関からも情報が発信されています。
以下では、政府機関や報道機関による調査結果を紹介します。
環境省による調査
環境省によるPFAS調査では、2020年度から2024年度の5年間で水道事業者の検査実施率向上と基準値超過事業の大幅減少が確認されました。
調査を開始した2020年度は11事業で暫定目標値(50ng/L)を超過していましたが、年々減少し続け、2023年度は3事業、2024年度(9月30日時点)は0事業となりました。
検査を実施した事業数は毎年増加し、5年間で累計2,227事業が検査を実施。
過去に基準値を超過した全14事業も、検査結果では全て暫定目標値を下回っています。
全国の水道給水人口に占める安全確認済み人口の割合は98.2%に達し、ほぼ全ての国民が安全な水道水を利用できる状況が確認されています。
参考:水道におけるPFOS及びPFOAに関する調査の結果について (水道事業及び水道用水供給事業分) | 報道発表資料 | 環境省
NHKによる調査と多摩市の見解
2024年12月1日放送のNHKスペシャルで紹介された全国マップにおいて、多摩市が暫定目標値超過を示す「赤色」で表示されました。
しかしこの表示方法には問題があり、複数自治体に給水する水道事業者の検査結果について、給水区域内で検出された最大値をすべての自治体に一律反映させているためです。
東京都水道局は23区と多摩地域の複数自治体に給水しており、マップでは区域内の最高値が全自治体に適用されています。
そのため多摩市が赤色表示されていますが、実際の多摩市の水道水は現在まで国の暫定目標値(50ng/L)を超過したことはありません。
参考:水道水及び地下水における有機フッ素化合物について|多摩市公式ホームページ
水道水のPFAS検出全国マップ

PFASの地域別の検出状況を正しく把握することで、自分の生活圏における水の安全性を判断しやすくなります。
国や自治体によるモニタリングでは、検査結果に応じて以下の4色で分類されています。
- 赤色:暫定目標値(50ng/L)超過
- 黄色:暫定目標値(50ng/L)以下
- 水色:定量下限値または検出下限値未満
- 灰色:検査未実施
以下では、水道水・河川・湖沼・地下水の3つに分けて、地域ごとの検出傾向と注意点を詳しく解説します。
特に、過去データで「赤色」に分類されたエリアや、検査が未実施となっている自治体は、今後も情報を注視する必要があります。
水道水
水道水のPFAS検出状況マップは、以下のとおりです。(2024年度9月末まで)
| 黄色が多い地域 |
|---|
| 茨城県 / 埼玉県 / 千葉県 / 東京都 / 神奈川県 / 静岡県 / 愛知県 / 京都府 / 兵庫県 / 福岡県 / |
| 水色が多い地域 |
| 北海道 / 青森県 / 岩手県 / 宮城県 / 秋田県 / 山形県 / 福島県 / 栃木県 / 群馬県 / 新潟県 / 富山県 / 石川県 / 福井県 / 山梨県 / 岐阜県 / 三重県 / 滋賀県 / 奈良県 / 和歌山県 / 岡山県 / 広島県 / 徳島県 / 香川県 / 愛媛県 / 高知県 / 佐賀県 / 熊本県 / 大分県 / 宮崎県 / 鹿児島県 / 沖縄県 |
| 灰色が多い地域 |
| 鳥取県 / 島根県 / 山口県 / 長崎県 / |
※水道水のPFAS検出状況マップから算出
上記のように「暫定目標値(50ng/L)超過」の地域は、現在のところ検出されていません。
全国的に「定量下限値または検出下限値未満」の地域が多いため、水道水においては心配する必要はないと言えます。
河川・湖沼
河川・湖沼では、「暫定目標値(50ng/L)超過」の地域のみを紹介します。
ただし、下記の情報は2022年度のものです。
- 京都府綾部市
- 兵庫県神戸市
- 大阪府堺市
- 大阪府吹田市
- 大阪府摂津市
- 大阪府高槻市
- 大阪府枚方市
- 大阪府八幡市
- 奈良県生駒市
- 奈良県奈良市
- 奈良県桜井市
- 三重県四日市市
- 愛知県半田市
- 神奈川県大和市
- 神奈川県綾瀬市
- 神奈川県藤沢市
- 埼玉県川越市
- 千葉県柏市
- 千葉県白井市
- 千葉県市原市
- 茨城権鉾田市
関東~関西エリアの河川・湖沼では「暫定目標値(50ng/L)超過」とされている地域が多く、その他の地域では目標値(50ng/L)以下となっています。
※参考:“PFAS汚染” 全国マップ(河川・地下水等 令和4年度)
地下水
地下水でも、「暫定目標値(50ng/L)超過」の地域のみを紹介します。
ただし、下記の情報は2022年度のものです。
- 熊本県熊本市
- 大分県大分市
- 兵庫県神戸市
- 兵庫県西宮市
- 兵庫県尼崎市
- 大阪府大阪市
- 大阪府摂津市
- 大阪府茨木市
- 福井県越前市
- 愛知県春日井市
- 愛知県刈谷市
- 神奈川県秦野市
- 神奈川県座間市
- 神奈川県綾瀬市
- 東京都武蔵村山市
- 東京都立川市
- 東京都日野市
- 東京都国立市
- 東京都国分寺市
- 東京都府中市
- 東京都調布市
- 東京都狛江市
- 東京都武蔵野市
- 東京都西東京市
- 東京都練馬区
- 東京都世田谷区
- 東京都大田区
- 東京都渋谷区
- 東京都文京区
- 山形県山形市
地下水においても、関西・関東エリアの他、河川・湖沼では出てこなかった地域も「暫定目標値(50ng/L)超過」となっています。
※参考:“PFAS汚染” 全国マップ(河川・地下水等 令和4年度)
2025年よりPFAS検査が義務化

2026年4月から水道事業者にPFOS・PFOAの定期検査と基準値遵守が法的に義務化されます。
環境省が省令を改正し、これまでの暫定目標値を正式な水質基準に格上げしました。
基準値は両物質合計で1リットルあたり50ナノグラムとし、水道事業者は3ヶ月に1回の定期検査を実施する必要があります。
従来は努力義務でしたが、今後は基準値超過時に原因究明と水質改善が法的に義務化されます。
小規模な簡易水道や専用水道では、検出濃度が低い場合の検査回数軽減策も設けられました。
この改正により、全国統一的な監視体制が確立され、水道水の安全性確保が強化されます。
※参考:PFAS「水質基準」の対象に 環境省が省令改正、2026年4月施行 - 産経ニュース
PFAS汚染の心配なく水を飲むには?

PFASの健康リスクが広く認識され始めた昨今では、毎日口にする水の安全性を見直す人が増えています。
水道水の安全性が高まっている一方で、家庭でより確実にPFASのリスクを回避するための対策も考えておきましょう。
以下では、PFASを含まない水を選ぶための具体的な方法を紹介します。
浄水器の設置
PFASの除去には、特定のフィルター性能を備えた浄水器の導入が効果的です。
一般的な活性炭フィルターでは十分に除去できないことがあり、粒状活性炭(GAC)や逆浸透膜(RO)を搭載した浄水器が推奨されています。
これらの高性能フィルターは、水に含まれるPFOAやPFOSといった代表的なPFASを90%以上除去する実績があるとされています。
浄水器の中には、蛇口直結型・据え置き型・ビルトイン型などさまざまなタイプがあり、家庭の使用スタイルに応じて選ぶことができます。
設置のコストやフィルター交換の頻度も考慮しつつ、信頼できる製品を選んでください。
ペットボトルの水
市販のペットボトル水は、厳しい基準のもとで製造されており、多くの場合PFASを含まない安全な飲料水として利用できます。
特に「ナチュラルミネラルウォーター」「純水」「RO水」などの表記がある製品は、製造過程で濾過処理や加熱殺菌が行われ、PFAS除去効果も期待できます。
ただし、すべての製品がPFAS検査を実施しているわけではないため、製造元が明確で水源や処理方法が開示されている商品を選ぶようにしてください。
ペットボトルの水の安全性については、下記の記事も参考になります。
ペットボトルの水は安全?基準項目や検査の対象となる成分を解説
ウォーターサーバー
ウォーターサーバーも、PFASリスクを回避するためのおすすめの方法です。
多くのウォーターサーバーで使用されている水は、採水地でろ過・加熱殺菌された天然水や、逆浸透膜処理されたRO水が主流であり、PFASが混入している可能性は極めて低いとされています。
また、定期的なボトル配送とサーバーメンテナンスがあるため、常に新鮮で清潔な水を使える点もメリットです。
導入時には、採水方法や処理工程、水質検査データが公開されているかを確認し、安心できる業者を選びましょう。
PFASのリスクを正しく理解し、安全な水を選ぼう

PFASは「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境や体内に長期間残留する性質があります。
現時点で明確な摂取基準がないとはいえ、世界中で健康への影響が報告されており、特に妊婦や乳幼児、免疫力が低い人にとっては無視できないリスクです。
日本国内の水道水は年々安全性が向上していますが、一部の地域では河川・地下水からのPFAS検出が確認されており、個人レベルでの対策も重要になってきました。
「どこまで気をつけるべきか」に迷う方もいるかもしれませんが、大切なのは無理なく続けられる範囲で、安全な水を選ぶ習慣を持つことです。
毎日飲む水だからこそ、安心できるものを選ぶ意識を少しずつ持ってみてはいかがでしょうか。
なお、リセットタイムのウォーターサーバーは、安全性にこだわっています。
- クリーンルームで外気に触れることのない充填体制
- モンドセレクションの360°品質評価にて金賞を受賞
- ろ過除菌のみの完全非加熱
- PFAS検査・放射能検査を定期的に実施
- 硝酸態窒素が不検出
毎日飲むお水を、おいしく安全に飲むために、ぜひリセットタイムのウォーターサーバーをご検討ください。

執筆監修
宮崎 寿治
ResetTimeのほか、かぞく想いの天然水、純天然アルカリ保存水の担当として営業活動を執り行うかたわら、日々知識をアップデートすべく勉強中。独自の切り口から様々な情報を取り入れ、そこで得た知識を基に記事の監修を行う。得意分野は保存水。








